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「荒野」を読む

順番は不同になってしまいましたが、
「私の男」
「赤朽葉家の伝説」

に続いて、桜庭一樹の「荒野」を読みました。
私は友人から借りた単行本で読んだのですが、文庫だと2巻になっているようですね。

荒野―12歳ぼくの小さな黒猫ちゃん (文春文庫)Book荒野―12歳ぼくの小さな黒猫ちゃん (文春文庫)

著者:桜庭 一樹
販売元:文藝春秋
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荒野 14歳 勝ち猫、負け猫 (文春文庫)Book荒野 14歳 勝ち猫、負け猫 (文春文庫)


著者:桜庭 一樹

販売元:文藝春秋

発売日:2011/02/10
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「少女から、女へ…」と言ってしまうと、非常に陳腐なのですが、女性ならわかる、12歳から16歳くらいまでの、あのゆれる気持ちが見事です。

もう○○年も昔の、自分のことを、じわじわと思い出し、懐かしく甘酸っぱく、恥ずかしい気持ちや不安な気持ちを思い出しました。

主人公は「山野内荒野(こうや)」という、少女。父は恋愛小説家。(母はなくなっています)。

イニシエーションストーリーといえばそれまでですが、「少年が、大人の男へ」というのは冒険をしたり、なにか大きな出来事を乗り越えていくものが多いなか、これは違います。

少女が女になっていくのには、あまり大きな事件はいらないのだなあ、と思い出しました。

中学生になって制服を着たときの、微妙な居心地の悪さ。

身体の変化の不安。

いちばん美醜が気になる時期なのに、容赦なくでてくるニキビ。

男の子が、男の人になってきて、ちょっと気持ち悪く思う感じ。

男の子と女の子は、それぞれ同性グループとして単位ができていたのに、いつのまにかそれが解散して、男女カップルが単位になっていた、あのころ。

親も「男女」であることに、なんだかいや〜な気持ちになる瞬間。

父をめぐる女性たち(複数形)との関係も面白いです。


ほかの作品に比べての「軽さ」は否めませんが、女性は、読んでソンはないでしょう。

あの「いけていなかったころの、少女の自分」と出合えます(笑)。もう二度とない、あのサナギな時期。

(ちなみに主人公は、少女時代ならではの失敗的ストーリーが少ないです。そこが物足りなかった)。


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「漂砂のうたう」を読む

おひさしぶりです。

「最近、更新してないでしょ〜」と言われて、ああ、そうだったなあ、と。


ツイッターやらミクシィやらのほかに、フェイスブックまで登録しちゃったから、このブログの立ち位置がよくわかんなくなっちゃって。

まあ、基本的には、映画や本などの感想の備忘録的に使いたいと思います。


ブログのほうが長文にむいているもんね。


というわけで、主題。今年の直木賞受賞作品です。


漂砂のうたうBook漂砂のうたう


著者:木内 昇

販売元:集英社
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ひとことでいうなら「うまい!」


維新後の郭の、見世の入り口というピンポイントなところまで、タイムスリップさせらて、物語をすべて、この目で見てきたような気持ちになりました。

登場人物がすべて、癖があるんだけど、これがとても魅力的。しかも主人公の定九郎は、キャラが「中途半端」というキャラです。登場人物の中で、いちばん、迷い、苦しみ、その苦しみすら半端だったりするわけで。

それに比べて、郭の女達の凛としたところが際立ちますし、ポン太という噺家もなんともいえず味があります。


前半〜中盤までは、見世での日常が描かれていて、とくにさしたる事件らしい事件もありません。そこで人間関係や、習慣や、「維新後の郭での人間模様」がみえてきます。


後半にさしかかると、かなりドキドキする仕掛けが待っています。内容は言わないよ〜。


見たこともない、維新後の根津の郭が、頭のなかにどんどんひろがりますし、設定や台詞に齟齬のない徹底したキャラづくりと人物表現は、本当に上手いと思います。


江戸や時代ものが好きな宮部みゆきさんが、押しに押しての受賞、という噂も、本当かもしれないですね。杉浦日向子さんなき今、こうして、いきいきとえがかれる時代ものを書ける作家がいるというのは、私にとって大きなよろこびです。

ちなみに「木内昇」さんは「のぼり」さんなんですよ。1967年生まれの女性です。


ほかの作品も読んでみたくなりました。


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