« 『「狂い」の構造』を読む | トップページ | 『新八犬伝』を読む »

『殺人者たちの午後』を読む

正月にふさわしくない読書、第2弾です。沢木耕太郎さんが訳しています。

いつものようにKから借りた本です。

殺人者たちの午後 Book 殺人者たちの午後

著者:トニー・パーカー
販売元:飛鳥新社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

表紙の写真はハービー山口の撮影。

イギリスのノンフィクションです。トニー・パーカーによる、英国の殺人を犯した人たちへのインタビュー集。英国では死刑がないため、終身刑が最高刑となります。

終身といっても、ある程度の時期が過ぎると、保護観察や報告義務などのいくつかの条件をもとに仮釈放というかたちで社会にもどることができる場合があります。

10人の受刑者(すでに社会にでているケースが多い)にインタビューをしていますが、その殺人に至った経緯のひとつとして、たいていはまず、その人の生い立ちから語られています。たまたまなのか、家庭的にも経済的にも問題があった人がほとんどです。

イギリスという階級社会のせいなのか・・・。両親からして経済的に問題をもち、暴力や虐待を受けているケースが多いです。本人も学業をドロップアウトしていて、たいていは少年時から問題をおこして少年院などの施設を経験しており、しかもそれを当時は「誇りと思っていた」ケースが多いのです。

そんな彼らが人を殺すのは、意図的な強盗殺人や根深い恨みによる計画的殺人ではなく、「ふと、勢いで人を殺してしまった」という、衝動的、いや、そこまで感情的でもない、強いて名づけるとしたら「ノーアイデア殺人」。

すなわち、ほとんど日常の延長として、殺人を犯しています。

彼らは終身刑を受けますが、ある程度の時期に復帰見直しをされ、世にもどります。
でも、就職時には「自分には殺人の過去がある」ことを報告しなければならないし、交際相手ができても、その人にもその過去を伝え、保護監査者にも常に自分の状況やつきあう人などを報告しなければなりません。

赤ちゃんを殺してしまった男は、社会にもどってから、自分の孫であっても、赤ちゃんと二人きりになる瞬間を許されることはないのです。

住み込みの家政婦の職を得た元・殺人者の女性も、「元・殺人者である」ことを告白することで、職をなくしてしまいます。

「罪を憎んで、人を憎まず」・・・。それは、どの立場をとるかによって、私自身も、悩むところです。

人間を殺した人が社会に復帰することを、あなたは許せますか? 
以前ご紹介した『心にナイフをしのばせて』で紹介されているケースでは、少年時に同級生を殺した少年Aが、現在は名前を明かされることなく弁護士として社会に復帰し、成功しています。
ううむ。被害者の親からするとこれはなんとも腑に落ちないものがあるでしょう。

 心にナイフをしのばせて

心にナイフをしのばせて
販売元:セブンアンドワイ
セブンアンドワイで詳細を確認する

更生って、なんなんでしょうね。『殺人者の・・・』の最後の章でインタビューに答えた元・殺人者である女性は、その後、信仰を得て、さらにパートナーとなる人と出会い結婚し、「いずれは出所後の人のためのホステルや寄宿舎のようなことを用意してあげたい」と考えています。

この本の原題は「ライフ アフター ライフ」。(ライフにはふたつの意味があり、ひとつには「終身刑」を指します)。終身刑後の人生、終身刑を宣告された犯罪者が仮釈放されたあとに過ごす日々。

死刑制度とあわせて、考え続けたいことですね。

|

« 『「狂い」の構造』を読む | トップページ | 『新八犬伝』を読む »

「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 『「狂い」の構造』を読む | トップページ | 『新八犬伝』を読む »